本当に「老後に2000万円の蓄えが必要か」身をもって検証してみた

「年金だけでは老後の資金を賄(まかな)えなず、95歳まで生きるのに夫婦で2000万円の蓄えが必要」と金融庁の金融審議会の市場ワーキング・グループが2019年6月に公表した報告書が世間を賑わしているのはご存じのとおりです。

もちろん、個々の経済状況は異なるわけですからすべての人が2000万円不足するわけではありません。でも、自他に認める平均的な我が家にとって老後に2000万円必要かどうかは死活問題ですから、老後資金はいくらぐらい必要なのか身をもって検証してみました。

ことの発端とその影響

お騒がせの発端となった金融庁金融審議会の市場ワーキング・グループが公表した報告書「高齢社会における資産形成・管理」の趣旨は「老後を自分ごととして捕らえ今後のライフプラン・マネープランを考えましょう」というものでした。でも、年金に対して不満や不安、不信に思っていた国民が「年金だけでは老後の資金を賄(まかな)えなず、95歳まで生きるのに夫婦で2000万円の蓄えが必要」という部分にものすごい興味や関心を寄せてしまったのは当然のことでしょう。

しかも、自動車税や固定資産税、国民年金を先月納付したばかりという方も多く、加えて財務大臣の「今まで何してたんだ」発言もあって、ネットだけでなくリアル社会でも一大騒動になってしまいました。そして、「やっぱり年金だけで生活するのは無理なのか」と改めて認識させられたのは、私だけではないはずです。

参考 高齢社会における資産形成・管理金融庁

そもそも年金でいくらもらえるの?

厚生年金や国民年金の加入者には、毎年誕生月に「ねんきん定期便」が送られてきます。もちろん私のところにもちゃんと毎年届いております。でも、「ねんきん定期便」の記述内容が送付される年齢によって違うって知ってましたか? 私は今回の騒ぎが起きるまで知りませんでした。どのように違うかというと下の表のようになります。

区分 送付形式 内容 備考
毎年(節目以外) 50歳未満 はがき 直近1年間の情報 被保険者の誕生月に郵送
50歳以上 年金見込額
節目の年 59歳 封筒 年金見込額
35歳、45歳 これまでの加入実績に応じた年金額

出典 日本年金機構HP

私の年金受取額は月19万9千円(いまのところ・・・)

幸い(?)なことに私は52歳なので「ねんきん定期便」には年金見込額が記入されています。65歳から1年間の受け取り見込額は、約239万円です。これを12ヶ月で割ると19万9千円です。(俺より多いじゃねえか!とか、俺より少ないという突っ込みは無しですよ。)忘れちゃいけないのは、60歳定年で仕事辞めても年金受給は65歳からだということです。60歳で完全リタイアしたときは、無収入で5年間やりくりしなくてはいけません。その5年間を生きていくだけでも1000万円くらいは必要だろう!!と怒りたくなるのを我慢して、ここは運良く、65歳まで何らかの仕事を継続して収支がプラマイゼロにしたと仮定します。(※年金額は下がりますが、受給開始年齢を繰り上げることもできます)

それから妻の年金は当てにしないということも大前提です。

それにしても金融審議会の報告書にあった「高齢夫婦無職世帯の平均収入」が社会保障給付が19万1880円とあり、私の年金額と大して変わりありません。我が家は本当に平均的だなあと思います。

MEMO
年金見込額とは、「現在の加入条件で60歳まで継続して加入したものと仮定した場合」の年金額のこと

また、50歳未満の場合でもある程度の年金見込額を知る方法があります。日本年金機構HPに自分で条件を入力していき、将来受け取る老齢年金の見込額を試算できます。50歳以下の方はこちらで試算してもらうのもよいかも。でも、自分も10年以上先が元気で仕事しているかどうかなんかわからないので程度参考になるかは未知数ですね。

参考 年金見込試算日本年金機構

そもそも一月生活するのにいくらかかるの?

そもそも老後に生活するのっていくらかかるのでしょうか? 今の生活水準のまま老後の生活費を試算するのはちょっと乱暴な気がします。なぜなら、住宅ローンもまだ残っているし、生命保険も払っているし、健康状態や家族環境による支出等の不確定要素が多すぎです。そこで、ここでは、老後は一切食べない、出かけない、趣味もやらない、買い物しない、調子が悪くても病院行かないで家の中でただ過ごすと仮定して試算ることにします。こうすることで、本当に最低限必要な額がわかります。そして、最低限必要な額が受け取る年金額よりも多かったらその時点でもう破産だし、その逆なら生きていける見込みが立ちそうです。

まずは「食べないで生きていくだけ」という一見矛盾している最低限必要な支出項目とその金額の洗い出しです。

洗い出しに際して、住宅ローンは完済、民間の保険はすべて解約し県民共済に加入したとします。少し手間でしたが、支払金額と項目を調べてまとめたのが下の表です。

カテゴリー 項目 支出見込額
住に関するもの マンション管理費 29000円
上下水道代(1ヶ月に換算) 3500円
ガス代 5000円
電気代 5500円
税に関するもの 固定資産税(1ヶ月換算) 13000円
自動車税(2台分) 3900円
住民税(網走市の例から)(1ヶ月換算) 3000円
国民健康保険料(1ヶ月に算) 13300円
介護保険料(1ヶ月換算) 2500円
情報・通信代 新聞代 3700円
固定電話代 2700円
携帯電話代(家族分) 10000円
家用ネット接続料 3300円
NHK受信料 2280円
保険に関するもの 自動車任意保険代(2台分・1ヶ月換算) 7500円
県民共済(二人分) 4000円
維持費 法定点検・車検代(2代分・1ヶ月換算) 10000円
合計

122180円

参考 住民税の計算例網走市HP

老後は一切食べないという最低限な生活でも12万2千円もかかることが判明

支出見込み額を合計すると、老後は一切食べない、出かけない、趣味もやらない、買い物しない、調子が悪くても病院行かないで家の中でただ過ごすだけでもけで12万2千円もかかることが判明しました。

金融審議会の報告書では、食費6万4千円(こんなには我が家は食べないかも)、教養娯楽費2万5千円ほどと示されているので素直にそのまま足してみます。そうすると21万1千円ほどになりました。

ガソリン代は食費と娯楽費に入っていると考えても、介護費用や医療費が入っていませんから、この先年齢を重ねるほど資金が不足することは容易に想像ができます。

自他に認める平均的な我が家の場合、老後の1ヶ月の生活費は最低21万1千円かかるらしい。

金融市議会報告書では、平均1ヶ月の支出額は26万円3718円と試算しています。1ヶ月の必要生活費は人によっても違うでしょうが、それは受給年金額も同じです。平均的な我が家でもぎりぎりなのですから、平均よりも少ない年金支給額の方にとっては厳しい老後になりそうです。